「働かざる者食うべからず」という考え方の国と「働かなくても生活最低限のお金が貰える」と言う国があったなら、あなたは、どちらの国を選択しますか?
ベーシックインカムを導入するとは、どう言うことなのか、その政策は、どんな利点があり弊害を招いてしまうのか、また導入するとして日本政府がどのようにして財源を捻出すると言うのか。
そこで今回は、日本のベーシックインカム導入についてじっくり考えようと思いました。
ベーシックインカムとは?|他の政策との違い
ベーシックインカム(basic income)とは、政府が金持ちも貧しい人にも、生まれたばかりの子供にも、すべての個人に対して、生活に最低限必要な現金を無条件で毎月支給する政策・制度のこと。
政府が国民に対して最低限の生活を送る為に定期的に現金を支給する政策で、国民配当/基本所得保障/最低生活保障と呼ばれる場合もあります。
その他の政策との大きな違いは、「失業保険」「医療補助」「子育て支援」等の個別の名目ではなく、保証を一元化して「国民生活の最低限度の収入を補償する」ことが目的です。
メリットは何か?
少子化対策
少子高齢化は深刻な問題であるが、現在の平均的な所得水準では子を産み育てることは容易なことではない。必ずしも直結するわけではありませんが、「世帯に対しての支給」ではなく「個人単位での支給」になるため、単純に子供が増えることで世帯所得が増加します。そのため、長期的には少子化対策になると考えられています。
貧困対策
非正規雇用の広がりと賃金格差、この国の社会格差は広がり続けている。ベーシックインカム導入により一定の所得を補償することで、最低限以上の生活を送れるようになります。またワーキングプア(働く貧困者)の対策が格差是正につながると期待されています。
社会保障制度の簡略化
現在の社会保障制度には「失業保険」「生活保護」に代表されるような、様々な仕組みがあります。ベーシックインカムを導入することでそれらを一本化することで、社会保障制度を簡略化することにつながり、行政コストの削減にもつながります。
また、生活保護の不正受給が社会問題になっていますが、その対策としても効果が期待できます。
地方活性化
全国で一律に配布されることを前提とした場合、地価・物価の安い地方で生活することがメリットになります。特にテレワーク・リモートワークが推奨される時代になったことで、より地方での生活を考える人が増えてきています。(通勤負担の軽減も大きいでしょう)
デメリット|問題点とは?
メリットだけではなく、当然デメリットも存在しています。一長一短な側面があり、より洗練された制度を作っていくことが求められるでしょう。
労働意欲の低下
無条件に生活費を与えると働かない人が増える可能性があり企業は労働者の確保が困難なため賃上げ要求にも応じざるを得なくなる。生産性が低下し人件費が上がると当然、物価も上昇してしまう。
個人の責任が大きくなる
社会保障をベーシックインカムに一元化した場合を仮定すると、「後はご自身の責任で全て考えてください」という事になります。現在のような「必要な人に必要な分を補償する」制度ではなくなるため、個人の責任が大きくなると考えられています。
財源の不安
全国民に一定金額の現金を給付するとなると、当然財源の確保がデメリットとして考えられます。産油国のように天然の資源があり、国家に大きな収入源がある事が必要になりますが、日本はエネルギー政策面で大きな収入があるような状況ではありません。そのため、不況に陥った場合等に財源確保が難しくなる可能性があります。
導入事例|ベーシックインカムの効果
アメリカ、カナダ、オランダ、イタリア、インド等、世界各国で導入実験が行われています。所得制限がある場合と無い場合で効果や意味合いが変わってきますが、ここではフィンランドの導入事例を紹介します。
フィンランドでは無作為に選ばれた2,000人の失業者に対してに対して、約600ドル/月を2年間支給する導入試験が行われています。
なぜ、導入試験を行ったのか
失業率が約9%と深刻な状況が続いていて、その対策として新たな社会保障の仕組みを考えていきました。その中でベーシックインカムを導入することで、人々の生活や生産性・労働への意欲がどう変化するかを見極めることになりました。
効果はあったのか
以下のような効果があったと言われています。
・シングルマザーが所得の増加により貧困から抜け出せた。
・起業する等の新しい事への挑戦がしやすくなった。(失敗によるリスク軽減)
・QOL(生活の質)が向上した。
その他の国でも導入試験により「子供の死亡率が低下した」「犯罪率が低下した」等の効果があったと言われています。
日本のベーシックインカムの導入はあるのか?
議論されることはありますが、現状では「可能性はかなり低い」と考えられます。まず、与党の自民党は基本的に反対の立場をとっているため、議論はされても導入までは至らないでしょう。
※理由としては、現在議論されているベーシックインカムの制度が「年金、医療、介護、生活保護、保育などの子育て支援を含めた社会保障制度を削減、または廃止し、自己負担を増やしていくことが前提」なため、まずは「現状の問題点を解決していく方が良い」という方針です。
野党の中で公約として掲げている党もありますが、少数政党なため実現は難しいと考えられます。
最も大きな課題・問題点は財源です。例えば「全国民に毎月7万円ずつ支給」したとすると多額の財源が必要になります。他国の事例を見ると、「消費税の大幅増加」がセットになることは避けられませんし、現在の社会保障制度の代替案として導入される可能性が高く、反対の意見が多くでる可能性が高くなります。
まとめ
日本でベーシックインカムを導入するには、行政作業のほとんどを見直さなくてはならないばかりか貨幣システムを含めた大きな変革を必要とします。特に社会システムが高度化している日本では、かなり困難が多いと言わざるを得ません。日本で実施していく場合、電子マネーを完全普及し行政手続きをスリム化させたり行政処理のすべてをコンピュータシステムで自動化する等、段階的に行う必要があと思います。しかしながらAI(人口知能)の急速な進化に伴い、生産性が明らかに人間を上回ってしまう世の中になるとすれば、遠い未来ではない一つの選択肢だと思います。
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